恋のお相手は小さな男の子
「俺に居るのは弟だけ。兄ちゃんなんて居ねぇよ」
「ええっ!?」
「嘘に決まってんだろうが。馬鹿葉月」
記憶喪失とかじゃなくて、佑真君の吐いた嘘。
「何じゃそりゃー!!」
馬鹿って!
そんなのあの一瞬で理解しろって事かい!?
だってだって、私、佑真君にお兄さんがいるかも知らないのに無理だっつーの!
私の叫び声が響くと「あー、うっさい」と両手で両耳を押さえる佑真君は、やっぱりちょっと大人っぽい。
何だか叫んでいる私の方が年下に見えるっていう。
ゴホンッと一度咳払いをすると、大人の女性っぽく佑真君に、にっこりと微笑み掛ける。
「何でそんな嘘ついたの?」
冷静に子供の話を聞く大人。
まさに、今の私はそれだ。
そのせいか、目の前にいる佑真君はふぅっと息を吐くとばつが悪そうに人差し指でぽりぽりと頬を掻く。
そして、
「あの男。葉月を振った男だろ」
そう呟いた。