恋のお相手は小さな男の子



夕香からの視線にビクついている私を尻目に、目の前でにこにこしている彼は腹部に頭突きを食らわされたのに自棄にご機嫌だ。



「あっ、俺。畑野 渉(ハタノ ワタル)。こっちこそ遅れて来てすみません」



本当に申し訳なさそうに頭をペコッと下げる畑野さん。


畑野だから、『はっち』と呼ばれているんだろう。


ついさっきまで『はっち』なる人に文句を言ってやると思っていたのに、こんなに申し訳なさそうにしている人に文句なんて言えない。


というか、頭突きをした私は言える立場じゃない。



「あっ、……いえいえいえ。そんな気にしないで下さい!」



思い切り頭をぶんぶんと横に振るとクスクスと畑野さんの笑い声が聞こえてくる。



馬鹿に……されてるよね。


あー、もう。こんなに馬鹿にされるのも全部全部、佑真君のせいなんだから。



そう思ってチラッと店内を伺うが佑真君の姿はもう見えない。



逃げ足、速いし!



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