クリアスカイ
アツシは須藤の左手首を離さず、その指先を掴む。
薬指にキラリとシルバーのリングが光っていた。
つー君が身をのりだし
「あ、それ俺もさっき思った!…まさか須藤
「結婚したけど?」
須藤がつー君の言葉を遮り、しれっとした顔で言った。
「マジかっ。おめで…」
つー君が驚きながら言いかけたが、今度はアツシの悲鳴に遮られた。
「なんだよっ、『結婚するかも』じゃなかったのかよ!」
先越された〜!と大袈裟なほど泣きそうな勢いだ。
須藤は呆気にとられてアツシを見ていたが修二に言う。
「言ってなかったんだ。」
修二はジョッキのビールを飲み干すと
「ああ、言い忘れてた。」
確信犯的な笑みでニッコリ笑う。
「修二、知ってたんなら教えろよなぁ。」
つー君が突っ込むとアツシはうらめしそうに修二を睨んだ。

期待を裏切らないアツシのリアクションに修二は笑いを堪えきれなかった。須藤は電話で修二に言われた言葉を思い出して、ようやく理解していた。
「俺が〜…一番先に…結婚するはずだったのに〜っ…!!」
アツシがテーブルに伏せたまま、文句を言い続ける。
つー君は「まあ、落ち着け。」とアツシの肩をたたいて
「アツシの場合、相手探しが先だろっ?」
と地雷を踏んだ。
「わぁー!それを言うな!」
アツシは叫ぶとビールを一気に飲み干した。須藤も修二ももはや苦笑いだった。
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