クリアスカイ
気づけば、隣のサラリーマン風の客はいなくなっており、店内もまばらに空席ができはじめていた。

時計をみるともう11時近くなっていた。二度めの乾杯から笑いと会話は絶えることなく、それぞれの3年の月日がやはり長かった事を物語っていた。

須藤の奥さんとなった人は1つ年下の看護師だそうで、若い二人の結婚に回りは猛反対だったらしい。何とか説得して入籍したのが去年の話で、修二と街でバッタリでくわした時期は一番大変だった頃だと聞かされた。
つー君は卒業後、地元を離れて調理の勉強をしていたが修行先の店でひともんちゃく起こしてしまったらしく、結局その店を辞めて帰ってきたと言った。
喧嘩っぱやさだけは未だに健在のようだ。
修二は一人暮らしを始めた事や職場のできごとを少しだけ話した。
お約束のようだが話題性の少ないアツシの話はだいたいスルーされていた。



アツシが酔いつぶれたのはその後すぐだった。元々、酒には弱い方だが今日ははしゃぎすぎて飲みすぎたようだ。
対して須藤とつー君はとにかく酒豪で、特に須藤は顔にも出ないし未だにケロリとしている。
修二は二人の話を聞きながら、アツシの様子を気にしていた。真っ赤な顔をして椅子の背もたれに全体重を預ける格好で居眠りをしている。
時折、ガクンと首を揺らし両手は完全に脱力状態だ。
「アツシ、大丈夫かよ。」
須藤が横目でちらりとアツシを見て言った。
「弱ぇーくせに飲みすぎなんだよ。」
修二が呆れて答える。
「おーい、アツシ君っ。」
つー君が声をかけるがアツシはすっかり夢の中のようだった。
「ダメでしょ、これ。」
ひとしきり三人でアツシを観察しながら笑った。
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