クリアスカイ
変化
8月に入ると夏はいよいよ本番を迎え、街中が解放感に包まれたように浮足だっていた。
企業は夏季休暇に向け慌ただしくなり、休暇明けは溜った仕事に追われるという構図が一般的だった。
修二の会社も例外ではなく、休み明け最初の週はすっかりリズムの狂った体と仕事量が見事に反比例していてどうにも辛かった。
今日も出張にでている先輩の代わりに会議に参加していたため、ほとんど人のはけた社員食堂で遅めの昼食をとっていた。
ちょうど食べ終えた頃、かたわらの携帯がメールを受信した。
中身を確認すると
『今週の土曜、いつもの場所に集合♪』
短い文章の差し出し人はアツシだ。
修二は素早くキーを操作すると『了解』と打って送信ボタンを押す。



あの日の夜以来、こんなやりとりが頻繁に交されるようになっていた。
いつもの場所とは最初に行ったあの居酒屋で、週末は必ずといっていいほど、誘いがきていた。
もちろん連休中も何度かつれだされ、いつになくせわしい夏を過ごしていたのだった。
おかげで休み中退屈はしなかったものの、昼夜逆転の生活が続いたせいで、仕事初日のだるさといったら史上最悪レベルだった。

それでも誘いが来れば断ろうとは思わない。
いつの間にか顔を合わせるのが当たり前のような感覚におちいっていて、今までは快適だった一人の週末がとてつもなくつまらなく感じるほどだった。

誘いはだいたいいつも突然な為、家庭のある須藤は来れない事が多い。
初めは四人で会う事に意味があると思っていた修二だったが、一度三人で会ってしまえばそれはそれで普通に盛り上がり、須藤もたいして気にしていない雰囲気だったので、揃わない時は仕方がないのだと考えるようになっていた。
< 23 / 67 >

この作品をシェア

pagetop