クリアスカイ
土曜日の夜、予定どおり修二達はいつもの居酒屋にいた。
須藤は来れないと連絡があったため、三人でテーブルを囲んでいた。
「修二ー、俺すぐそこのカラオケボックスでバイト始めたー。」
つー君が今日も機嫌良く話しはじめた。
「へぇー。続くの?」
「うわぁ、チョー失礼だな。これでもしっかりやってますよ。」
つー君はポケットからくしゃくしゃの割引き券をとりだし、「やるよ。」とテーブルに置いた。
「これ使えんのかよ〜。」アツシが割引き券の皺をのばして、使用期限のスタンプを確認する。

どうやらまだ使えたらしく小さく折り畳むと
「いただき〜。」
と財布にしまった。

アツシはあの酔いつぶれた日以来、セーブしているのかあまり飲まなくなった。つー君のペースにのせられたらさすがの修二もまいってしまう。
一人ピッチをあげていくつー君は今日も絶好調のようだ。
手元のビールがなくなると同時につー君は
「俺、ちょっと煙草かってくるよ。」
と席を立った。
修二が
「俺ので良きゃあるけど。」
「うん、でもどっちみち買わなきゃなんないし。すぐ戻るよ。…やっぱ一本もらってこ。」
つー君は修二の手から抜き取ると、火をつけずくわえたまま足取りも軽く店をでていった。


「何かさー、修二とこうやってしょっちゅう飲みに行くようになるとは思わなかったよなぁ。」
不意にアツシが口を開いた。
「確かに。いつも俺んち来て何もせずに帰ってたもんな。」
「追い帰すの間違いだろ。」
「ん?そうだっけ?」
アツシは「そうだよ!」とつまみの枝豆を修二に投げた。
「そーいえばバイトあれからどうなった?」
修二はメニューを眺めながら何気なく聞いた。
最近バイトの愚痴をアツシが言わなくなったことにきづいたからだった。
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