クリアスカイ
それでも今までのつきあいがあるからこそ、こんな図々しさを見せられても、責めたてたり付き合いをやめようとは思わない。
むしろ修二のようなめんどくさがり屋に長いことつきあえるのはアツシぐらいかもしれなかった。


ぼーっとそんな事を考えながらアツシを眺める修二にきづいて、アツシは申し訳なさそうに、
「わり…、そんな飲みたかった?」
と空に近い缶ビールを揺らした。
的外れな気遣いに修二は苦笑した。
「あんま朝から飲みすぎんな。…バイトの話はもういいワケ?」
「あ〜…、うん、もういいや。次むかついたら辞めるし。だいたいあの程度の時給でこの俺をこきつかうってどうなのって話だよ。」「…おまえ、何様?」
アツシはくるっと振り向いて「俺様♪」と目を細めた。
アツシはいわゆるフリーターでバイトは夕方からの居酒屋だ。一応高校卒業の時は普通の会社に就職したのだが、どうにも性に合わなかったらしく半年ほどで退社したのだ。本人曰く「辞めた」と言っているが、詳細を聞いた修二には「クビになった」としか思えなかった。まあ、双方の解釈が違っていても納得の上の事だった為なんの問題もなかったのだが。
「そういや、修二は仕事どうよ?」
突然アツシが話をふってきた。
「別にフツーだよ。」
「フツーってなんだよ。他に言いようがあるだろ。綺麗な上司がいるとか、カワイイ社員がいるとか。」
「アホ。上司はオヤジだし女子社員はほとんど家庭持ちだし、アツシの想像してるよーな会社じゃねぇよ。」
修二が答えるとアツシはガッカリしたように肩をおとした。
本当にそうなのだから仕方がない。修二の勤め先は中小企業で週休2日のごく一般的な会社だ。残業は多少あるものの、人間関係には割と恵まれ、アツシが挫折したサラリーマンを修二は今も続けている。
週末休みが固定なおかげでこうしてアツシに入り浸られている事を除けば、さほど会社の待遇に不満はない。
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