クリアスカイ
「だけどあの夜アツシにああ言われて、よく考えたらホントに何にも知らねーじゃんってきづいた。バカ言ったり、いつもテンションたけーとか酒が弱いとか、どうでもいいことばっか。」
修二は長く伸びた灰を静かに落とした。須藤はただ黙って聞いていた。
「友達ヅラすんなって言われた時、そんな事ないって言えなかったし、正直そーゆー自分に今更きづいたって感じでさ。アツシの事わかってるつもりでいただけだったんだよ。」


「そんなの皆一緒じゃん。」
今まで黙っていた須藤が口を挟んだ。修二は「かもな。」と呟いた。
須藤は起き上がり、ふうっと息をついた。
「俺は昔から他人の事にはあんま興味ねーし、ある程度距離があった方がいいって思ってんだけど。」
須藤が修二に触発されたのか珍しくそんな事を言った。修二は少しだけ表情を緩めると「俺もそう思ってた。」と続けた。
「でもアツシがすげー心配で、つー君から聞いたってそのままスルーできたのに何かバカみてーに必死になったりしてて。」
「そんで返り討ちにあってりゃ世話ねぇな。」
須藤が笑った。
修二もつられて笑っていた。
「深くつきあいすぎると、いろいろでてくるからな。」
須藤は大きく伸びをしながら言った。
「それで良くねぇ?」
須藤が動きをとめた。修二はまっすぐ須藤を見ていた。
「俺はアツシも須藤もつー君も大事だと思ってるよ。四人でまた会うようになってから多分ずっとそう思ってた気がすんだよ。…須藤の考えを否定するわけじゃねーけど、俺は相手がどう思ってても努力するって決めたから。」

修二の脳裏に浅井の言葉が浮かんでいた。今度こそ揺らいだりしないように修二はあえて須藤に告げていた。
須藤は突然修二の手元にあった煙草を一本抜き取った。
「おい、お前やめたんだろ?」
制しようとした修二の手をはらいのけ、火をつけた。
「一本だけ。また禁煙するし。」
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