セカンド☆ライフ
二人で暮らし始めて10日ほどが過ぎた。

3日前に佐和田のオッサンから連絡があった。
接見は2日後。
詩乃も同行するようにとのこと。
実際に俺達を見てもらうのが手っ取り早いと考えたのだろう。

『集中集中!俺の手だけを思い浮かべて』

『んん…』

俺達はリンクなしでも詩乃の物理干渉を発現するための特訓を行なっていた。
西側での万が一に備えて、だ。
最初はできなかったが、少しずつコツを掴み始めている。
今では5秒ほど接触していられるようになった。

夜は俺のリンクの特訓を行った。
二人の意識を接続したまま、全ての感覚を遮断する。
いわゆる睡眠状態の節約モードでのリンクの維持、昨夜の時点で6時間ほど維持できている。

この特訓は通常モードでのリンク時間の延長にも繋がっている。
現状の限界時間は30分。

さらに、リンクを併用した物理干渉ならば3分ほどの間、干渉が可能となった。

『もうダメ…限界!』

『おお!7秒だよ7秒!2秒更新したよ!すっげぇ!』

『ん〜…でもゆいりくんは数分単位で更新してってるのに…2秒って…』

『いやいや、リンクと物理干渉じゃ根本的な演算量が違いすぎるから』

『む〜、よくわかんない』

『リンク状態で物理干渉してるとよくわかるよ、物理干渉はとんでもない量の情報を同時処理しなきゃいけないからね…今までリンクを使える人はいても、物理干渉を使える人がいなかったってのも頷ける…』

『いなかったのかな?』

『セカンドライフではいろんなことに便宜上の名前がついてるでしょ?リンクとかフォローとかノイズとか、でも物理干渉には名前がない』

『物理干渉って名前じゃないの?』

『物理干渉は事象の説明であって名前とは違う気がする』

『う〜ん、わかんないや…』

『まぁとにかく、便宜上の名前がないってことは、今まで存在が確認されてなかった事象なんだよきっと』

『でも原理はノイズのと同じなんでしょ?だったらノイズなんじゃないのかな?』

(同じ…なのかな…こうしてしのちゃんと触れ合ってると…なんか違う気がするんだよな…)

『ゆいりくん?』

『あぁごめん、俺、思うんだけどさ、ノイズの物理干渉としのちゃんの物理干渉は根本的に別物な気がする』

『そうなの?』

『確証はないけど、なんか違う気がするんだよなぁ』

『ゆいりくんがそう言うんなら違うのかもね♪』

『ありがと、今日の特訓はここまでにしようか』

『そだね〜』

(ん?)
『グラウンドに誰かいる…』

『生徒?』

『いや、そんなんじゃない』

『セカンド?』

『ファーストだと…思う…けど、こっちに気づいてるっぽい』

『え?』

『うん、気づいてる、気づいて、こっちに歩いて来てる』

『ゆいりくん…』

『大丈夫、いざとなったら逃げればいい』

『うん…』

ガタンッ!
コツコツコツ…

『入ってきたみたいだね…』

『足音がするってことはやっぱりファーストだな』

『怖い…』

『大丈夫、俺が守るから』

コツコツコツ…

(真っ直ぐここに向かってきてる)

「おぉぉぉい!ゆうれぇぇぇい!」

『な、なんだ?』

「いるんだろぉぉぉ!?」

コツコツコツ…

「わかってんだぞぉぉ!?さっき見たからなぁぁぁ!」

(根拠はないけど…たぶんこいつ頭悪いな)

ガラッ!

俺達のいる教室の扉が勢い良く開いた。

「み〜っけ♪」

『俺達が見えるのか?』

「まぁな」

!?
『驚いた、声も聞こえるのか』

「当たり前だろ馬鹿かてめぇ」

(当たり前じゃねぇよ馬鹿はお前だ)

「なぁおめぇらここで何してんの?」

『何って…住んでんだけど?』

「マジかよ!」

『悪いか?』

「ハハ!ファンキーだなおめぇら!」

『は?』
(なんだコイツ…できれば関わりたくない)

大柄の体躯、金髪のオールバック、ピアスに派手なジャージ、サングラス。
見るからに不良だ。

『俺らになんか甩?』

「いやな、幽霊見えたからよぉ、成仏いらねぇかなと思ってよぉ」

『いや、必要ない…』

「そうかそうか、そりゃ邪魔しちまったな、お呼びじゃねぇなら帰るわ!」

そう言うと男は立ち去った。

『なんだったのかなあの人…』

『わかんね…』
(本当になんだったんだ…)
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