セカンド☆ライフ

確定の夜

『詩乃、行こうか』

『うん』

俺達は最近、深夜の散歩にハマっている。
浮いているので厳密には散歩とは言えないが…
上空から見る星空は格別だ。
まるで自分達が宇宙にいるかのような錯覚に陥る。

『いつ見てもすげぇな』

『空も凄いけど、下も綺麗だよ』

『おぉ、すげぇな』

『ここから見える街の灯の一つ一つに、いろんな人生があるんだよね』

『おや、詩乃さん詩人ですねぇ〜』

『もぉ…』

『でもそうだね、この灯りは人が生きてる証だからね…物を創れないセカンドだけになっちゃったら、世界中が真っ暗になるんだよね』

『そう考えるとファーストって凄いね』

『俺達も元ファーストだけどね』

『そうだけど…でもね、最近なんか生きてたっていう実感が薄いんだぁ』

『俺も、今が満たされてるからかな?』

『そうなのかな』

『ほんと、わかんねぇことだらけだねセカンドライフは』

『ノイズのこと…とか?』

『そうだね…詩乃の記憶から読み取ったバァさんの話では、ノイズがファーストに干渉できるのは確かなんだよね…』

『私も実際ノイズを使ってゆいりくんを…』

『あぁそっか、俺が死んでることが何よりの証拠なのか』

『ごめんなさい…』

『いいって、もう気にしてないから』

『でも…』

『じゃぁ…えっと…その…ほら…あれだ…』

『ん?』

『ち…ちゅうさせてくれたら許す、それでチャラ!』

『ち…ちゅ…えぇぇぇぇ!?』

『い…嫌?』

『嫌じゃ…ないです…』

『じゃぁ…視覚を遮断して…』

『ムードのない言い方…』

クスリと笑って詩乃は目を閉じた。

『よし…い…いきます…』

『ぱ…パミット…ゆいりくんが私に触れることを許可します…』

俺達は、初めて唇を重ねた。
実体がないのに、詩乃の温もりや柔らかさが伝わってくるようだ。

街の灯りの絨毯と、水平線まで続くパノラマの星空に包まれてのファーストキス。
生きてたら絶対に経験できなかったであろう、これ以上ないくらいのロマンチック。

そんなロマンチックをぶち壊す気配が一つ。

『ラブラブだね〜お二人さん♪』

『…会いたかったっすよ…純流さん…』
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