バレンタイン戦線異常アリ

「なあ」

「何よ」

「……春香も買ったのか?」


克司の視線が照れたように逸らされる。


え?
ちょっ、待って。

なんで春香が……。

克司の頬が心なしか赤い。
さっきまでの浮かれ気分が一転、どん底に突き落とされる。


「春香、……好きな奴いるのかな」

「さあ……私、知らない」

「俺さあ、実は春香が好きなんだよな」


小石でも飲み込んだみたい。
喉が詰まってチクチクと痛い。


「なあ、バレンタインに男から告白ってどう思う?」

「……っと、どうだろ」


ヤバイ。
声が震える。

克司の言葉が、頭の奥までちゃんと届いてない。
上滑りしていて、理解が出来ない。


――俺サア、春香ガ好キナンダヨナ――


私、克司が好きなんだよ?

一年半も片思いしてきたんだよ?

なのになんで。
それを私に言うのって残酷過ぎない?


「バレンタインデー。今年土曜だろ? 春香一人を誘うのは恥ずかしくてさ。お前さえよければ、洋介と四人で遊びに行かないか?」


絶対やだ。
それって、私に克司の告白の手伝いしろってことでしょ?


無理無理無理無理。
そんな自虐ネタ、笑えない。



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