バレンタイン戦線異常アリ
だけど、引きつった口元は、私の思い通りにはならなかった。
「……わかった」
何いってんの、私。
今まさに失恋してるのに。
私の気持ちにも気付かずに恋愛相談されてんだよ?
なにいい子ぶって、こんな返事してるの。
「サンキュー、和歌。恩にきる!」
克司は笑顔全開で先にあるゴミ捨て場まで走った。
ゴミ箱を逆さまにして、底のゴミまで払い落とす。
私の好きな克司。
いつだって見てるだけで幸せな気分になれたのに。
今はもう違う。
克司が笑う度に、心にヒビが入っていくみたい。
どうして春香なの?
よりによって、なんで私の親友なの。
頭がおかしくなりそう。
その時、背中側から洋介の声がした。
「あ、克司! お前何処行ってたんだよ。探してたんだぞ」
「おう。洋介」
「何だゴミ当番かよ……」
洋介が近づいてくる気配がする。
「和歌も一緒か」
声は明るい。
いや。ダメ。
今の私を見ないで。
「とっとと終わらせ……」
話しながら私を追い抜かした洋介の声が固まる。
気づいた。見られた。
どうにも笑えない私の顔。