バレンタイン戦線異常アリ
教室まで走って、扉を開ける直前にはたと気づく。
そういえば、一緒に帰ろうって約束もしてたし、教室では春香が待っているはずだ。
どうしよう。
今私、春香とマトモに話出来そうにない。
逃げようとした時、教室の扉が勢い良く開く。
「おう、和歌」
出てきたのはごきげんな克司だ。
「春香、土曜空いてるって。お前と一緒なら行くって言ってるから、絶対来いよ」
私の肩をポンと叩いて、克司はステップを踏んでいるような軽やかさで通り過ぎて行く。
これから部活に行くんだろう。克司と洋介は剣道部だ。
何が絶対来いよだよ。人の気も知らないで。
……でも。
そういえば克司だって片思いってことだよね。
春香も好きな人がいるみたいだったし。
だからといって、私はもう告白できない。
恋愛相談されるって、一番イケてないポジションじゃん。
なんでも話せる女の親友ってやつ?
そんなの、望んでなんか無かったのに。