バレンタイン戦線異常アリ
「バレンタインデー。四人で遊ぼうって言われたでしょう?」
「うん。和歌告白するって言ってたから、……協力できたらって思って。でも、和歌が嫌なら私行かないよ」
「ううん。来て。私、そこで告白するから、春香見てて」
春香の顔がこわばった。
「え? でも」
「見てて。私の告白。ちゃんと見守っててよ」
意地悪を言ってることくらい分かってる。
だけどどうしようもなかった。
ぐちゃぐちゃになった心が、こうでもしないと暴れ出しそう。
「言うつもり無いんでしょ。だったら私が告白するのを、その眼で見てて。そして諦めてよ」
「……和歌」
私はもう春香の顔が見れなかった。
うつむいて、嫌な言葉を吐き続けた。
なによこれ、嫌がらせじゃん。
私ってこんなに性格悪かったのかな。
春香、きっと泣いてる。
鼻をすするような音が時折り聞こえるもん。
モヤモヤした気持ちのまま、私は拳を握りしめていた。
やがて、春香の震える声が沈黙を割る。
「わかった、行く。……ごめん、今日は先に帰るね」
鞄を抱えて、春香が逃げるように走って行く。
意地悪な私。
嫌な私。
大嫌い大嫌い。
だけどねじ曲がってしまった気持ちには正論なんか何の効き目もなくて。
ただただ嫌な子だと自分を責めるしか出来なかった。