バレンタイン戦線異常アリ


「……っ」

「意地悪をして、それで楽になれるならいいけどさ。お前はそういうタイプじゃないじゃん」

「なんなのよ。洋介のバカ」

「泣け泣け、好きなだけ。そうすりゃすっきりする」

「うるさいっ」


泣いている女の子の傍にいたら、洋介が泣かせたって思われるんだからね。
後で変な噂がたったって知らないよ、私。


「洋介のあほんだら……」


両手で顔を抑えて、できるだけ声を出さないように泣いた。

洋介はその間、廊下からの視線を遮るように私の前に立ちはだかってくれていた。


洋介って意外と優しいんだ。

知らなかった。
いつも、克司の事で頭が一杯で。

春香の事も、どうしてもっと早く気付いてやれなかったんだろう。
私がいつも克司の事を相談するのを、あの子はどんな気持ちで聞いていたんだろう。

いつも自分のことばっかりで、私は周りの人の気持なんて何も考えてなかった。

胸が痛くて苦しい。
それでも涙と一緒に、なんかは出ていっているのかも知れない。
たっぷり三十分は泣いたら、少しだけ楽になった気がする。


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