バレンタイン戦線異常アリ
そしてやってくるバレンタインデー。
昨日、春香には絶対に来るように釘をさしてある。
ギクシャクしてる私たちに、無神経な克司は自分が原因とも気付かないまま「喧嘩でもしたのかよ」なんて言っていて、洋介は苦笑いしながら私の方を見ていた。
待ち合わせは、よく待ち合わせに使われる駅前の小さな公園だ。
市街地にある割には噴水とかもあって、いい雰囲気が出せるここは恋人たちから人気がある。
私は紙袋をギュッと握りしめた。
チョコレートの準備は万全。約束の十分前。きっと私が一番乗り……と思ったら、克司がすでにいる。
「克司、早いね」
声をかけると、克司は顔を緩ませた。
「和歌。だって緊張するだろ。俺、自分から告白なんかすんの初めてなんだって。見ろよこの手汗」
「ハイハイ」
「洋介には言ってあるんだけどさ。とりあえず最初は四人で楽しく遊ぼうぜ? で、帰り間際に、ちょっと二人きりにさせてくれよ」
「そんなまどろっこしいの嫌だよ」
克司はみているこっちが恥ずかしくなるほど緊張している。
克司ってこんなにあからさまに春香のこと好きだったのか。
今まで私はどうして気づかなかったんだろう。
何もかも、自分の都合のいいように解釈してたのかな。
不思議と、この間ほど胸は傷まない。
泣いたことで随分気持ちが浄化されてしまったのかな。
私は二人が来る前に、と克司に包みを差し出す。