バレンタイン戦線異常アリ
「はい、これ」
「なんだ?」
「バレンタインデーだもん。義理チョコだよ」
「おお、サンキュ」
何の気負いもなく、あっさりと克司はチョコを受け取った。
義理とか簡単に信じるなよ、バーカ。
……でもこれが私の立ち位置なんだ。
好きな子からの……春香からのチョコなら、もっと凄く興奮するはずだもん。
「実は手作りです」
「マジ? 和歌にそういうイメージねーわ」
「恐れいったか」
「マジ。恐れ入りました」
あははと笑い合う私達。
そろそろ来たかな、と後ろを向くと、春香が立ちすくんだままこっちを見ている。
予想通りだ。
きっと春香には、私が告白してうまくいったように見えてるに違いない。
きっと傷ついて、泣きそうになってる。
いい気味……だなんて思えれば楽だったけど、やっぱりそんな風には思えない。
その後ろ、洋介も立っている。
ただ静かに私の方を見つめている姿に、ばつが悪くなって舌をだす。
分かってるよ。
意地悪はここでおしまい。