バレンタイン戦線異常アリ

「こっちだよ。春香!」


私は元気よく春香の方に駆け寄った。対して春香はジリジリと一歩後ずさる。


「和歌。あの」

「ほら、春香にも友チョコ」

「え?」


私は、春香にもチョコレートの包みを差し出す。
私が克司に渡したのと同じもの。

そして克司に聞こえないようにこっそりと春香にささやく。


「どうせ春香は用意なんかしてないんでしょ。私は振られたんだ。だから今度は春香の番」

「え? 和歌」

「ちゃんと告白しなきゃ、仲直りなんかしないから。これ、克司にちゃんと渡しなよ。約束だよ、春香」


春香に無理やりチョコを押し付け、洋介の腕をとる。


「じゃあ、私たちは別行動するから。うまくやんなよ、克司!」


目を丸くする克司と春香。
洋介はニヤリと笑って肩を組んでくる。


「そうだな。俺たちはここで。じゃーな」


言ったが早いか洋介は走りだす。
引っ張られて、数メートル走った辺りで私の瞳から涙がこぼれだした。

いや、私頑張ったよ、ホントに。
ここまで言えれば大したもの。

ほめてやりたい、自分を。


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