バレンタイン戦線異常アリ
だけど、洋介の「あ、俺も食いたい」という一言によって、私のテンションは一気に下がる。
克司の口を離れたスプーンは、そのまま洋介に渡された。
ちょっと待ってよ。
アンタに渡す前に私に返して。
アンタと克司が間接キスしてどうすんのよ。
キモい、キモいって!
しかし、私の心の叫びが届くはずはなかった。
洋介はあっさりとスプーンを口に入れ、
「うん、うまい。サンキュー、和歌」なんて、屈託のない笑顔を私に向ける。
違う。そのスマイル要らない。
私の手に戻ってくるスプーンを睨みつけた。
バカバカー、アンタと間接キスなんかしたくないよ。
おもむろにティッシュをとり出してスプーンを拭くと、
「人をバイ菌みたいに扱うなよー」と苦笑いを浮かべる洋介。
バイ菌だっての。バカ!
千載一遇のチャンスを邪魔するとか最低なんだからね。
あまりのテンションの上下に疲れた。
はあとため息をついて正面を見ると、春香がヨーグルトを口に入れながら微笑んでいる。
「ホントに美味しいね、和歌」
「うん」
春香の笑顔は、春の日差しみたいでホワっとする。
丸顔で清楚系の私の親友は、究極の癒し系だ。
この顔見てると、色んな苛々が吹っ飛んでしまう。
まあいいかぁ。
一方通行だけど片側間接キスは果たしたわけだし。(味わいたい私が味わってないわけだが)