バレンタイン戦線異常アリ
「昨日さ。……駅前のスーパーに春香といた?」
「え?」
なんだよ。
それだけ口ごもって聞くことはそれかい。
「いたよ。なんで知ってんの?」
「俺と洋介、隣のゲーセンで遊んでたから」
「ふうん」
てことは、チョコレート買ったの見られてたのかな。
ああもしかして!
それで私の事気になっちゃった?
心配しなくてもいいよぉ。私が渡すのは克司なんだから。
「和歌も誰かに渡すのか?」
「え? えー。まあね」
ふと克司が立ち止まる。
背の高い彼の黒髪が揺れ、視線が私に注がれる。
息が止まりそう。
真摯な眼差しってこういうのをいうんだよ。
もしかして。告白とかされちゃうのかな。
ここが学校だとか。
人目があるとか。
思いっきり廊下の真ん中だとか。
そんなの、恋の熱情の前では関係ない……っ!
「克司……」
「もしかして洋介?」
「はぁっ? ちがっ」
拍子抜けして、裏声が出た。
なんで、洋介なのよ。
アンタだよアンタ。
馬鹿なの?
克司は大馬鹿鈍感野郎なの?
こんなに熱視線を送っているのに、気づかない訳ないよね。
それともこれは駆け引きかなんかなんですか。