どれだけ苦しくても…


私の中に嫌ぁ~な奴だと決められたこの人の名前は小川 塁(おがわ るい)24歳。

まぁ今年で25になる人だから私とは7つ違うのかな?とりあえず第一印象悪いし、年も離れている。だから恋愛対象にはならないと思うのだ。

だって考えてみてよ。私が小学1年生の時にはこの人は中学1年生。これは明らかにおかしいだろう。


ってことで男性職員は基本午後風呂担当が多いため、シフトがかぶることがないので安心している。けど、女性が午後風呂に加わることもあるためか、入社式から数日が経ち、私も少しは仕事に慣れてきたころ。なんと…午後風呂になってしまった。


なんていったって小川さんと同じ日に午後風呂が一緒になるだなんて。気まずいし、まだまともに話したこともなかったためかかなり緊張していた。

「はぁ…なんで一緒になるかな~もう」

まだ午後風呂にはまともに入ったことないのにそんな時に一緒になるなんて私は嫌だった。
嫌いな相手だから失敗して怒られる姿を見られたくはなかった。
この時の私はだから嫌だったのだろうと思う。

午前風呂、午後風呂には風呂リーダーという人が必ず一人いることになっている。風呂リーダーがお風呂の指示をだしたり、職員の配置を決めたりする。


そしてこの日の風呂リーダーは小川さん。何てことだ。


「んなら、始めるか。あ、森ちゃんまだわからんと思うけ、一通り教えるね」

「あ、はい。お願いします…」


一通り教えてもらいながらやっぱりこの人は苦手だと思った。

「またわからんかったら聞いて」

そう冷たい目で言われ、放置プレイ。
まぁ習ったからできるし、わからなかった聞けって言ったし。なんて思いながら仕事をはじめ、着々と午後風呂を終わらせていった。

利用者さんを全員入れ終わった後、片づけを始めた。その際にようやくまともに話せた気がする。その時はあんまり悪い人ではなさそうだと思った。

「ねぇ森ちゃんはこの中でどれが当たると思う?」

「へ?」

小川さんが手に取っているものを見ると新聞の競馬のページを広げていた。
私が見たとき“アトム”という名前が目についたため

「アトム!」

「何で?」そう言って笑った。
笑うとえくぼがでるんだ…良い顔するな。
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