想いの果てに、
急に小声になった杏奈。
うん、そうだよ。
今きっと、杏奈の中で1番起こって欲しくないことが起ころうとしてるよ。
「お姉ちゃんね、涼に小さい頃、指輪をあげたんだって」
「涼くんに…?」
「そうだよ、大事な彼女が出来た時にあげなさいってね」
「……そうなんだ…?」
「その指輪を、お揃いではめてたらいいよって」
「ふーん、ロマンチックだね」
「ね!すごいロマンチックだよね!小さい頃から大事にしてた指環だもん!」
「う、うん。だよね…」
杏奈はきっと、平静を装うのに精一杯だろう。
私は楽しんでるんだけどね、そんな状況を見て。
こんな私を涼が見たら、確実に嫌われるだろうなぁ…
でも涼は今校庭に居るから大丈夫。
バレることなんてないよ。
「それでね、その指輪、涼がはめてたんだよ。昨日」
「じゃぁ、棗も指輪、もらえたの?」
杏奈の問いかけに私はイラっときた。
もらえたの?って。
もらえてるわけないじゃん。
涼が大事に持っていた指輪は、今アンタの手にあるんだよ。
それを私にもらえたの?って聞くなんて…