想いの果てに、
イニシャル
杏奈が帰ったのを確認した後、私は再び教室に戻った。

床に落としたナイフを見て、再び自分の鞄に隠す。






「……私が、弱い証拠だね…」






ナイフを隠しながら涼と一緒に帰ってる杏奈の後姿を見て、そうポツリと呟いた。








「棗おる?」

「棗ですかっ!?ちょっと待っててくださいっ」






翌朝の教室前の廊下。

キャーキャーという声が響いてきたかと思うと、私は教室の入り口の前で立ち止まった。






「隼人先輩、どうかしたんですか?」

「あ、こっちにおったわ」






そう、この背の高い後姿は、涼と同じサッカー部の隼人先輩。

後ろを見て私を見つけるなり極上の笑顔で私を呼んでくれと頼んだ子にサンキュ、と軽くお礼を言った。

その子はボーっと顔を赤くして、「は、はい!」と答える。






恋する乙女って、こんなに可愛いのに、






どうして私はこんな醜い方向に走っちゃったんだろう…。

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