想いの果てに、
「棗、おっはよー!」
「お、おはよう…」
「おはよう、桜、杏奈」
いつも笑顔を忘れずに。
杏奈に向けられた笑顔は、偽りでしかないのだけど…
鞄を机の上に置き、自分の机の中を探る。
すぐ手の届くところに辞書があって、私はそれを引っ張り出した。
そして、それを隼人先輩のところへ歩きながら持っていってると…
「ちょっと棗!隼人さんを待たせちゃ駄目よ!」
「はぁ?」
隼人先輩の事が好きっぽい子。
本来ならインネンでも付けられているところだが、
私はクラスで堂々と涼が好き、と言い切っていたためか、その子は嫌味1つ言わない。
「お待たせしました」
「おー、おおきに!」
分厚い英和辞典を隼人先輩に渡す。
隼人先輩は、箱から辞書を出してパラパラ捲り、再び箱の中に戻した。
そして、私を見る。