想いの果てに、
「桜ー、杏奈。何話してるの?」

「あ、おっかえり~!」

「お、おかえり……」

「ただいまぁ。」

ニッコリと笑ってみせるが、それさえもただの偽り。

鞄の中の片付けを始めて、桜はポツリと口を開いた。






「ねぇ、棗、ライバル登場かもよ?」

「はぁ?ライバル?」

ライバルならすぐ目の前に居るけどね。

ライバルっていうか…裏切り者?

私はチラっと杏奈を見て、桜に視線を戻した。

杏奈も桜の台詞に少しだけ肩を震わせた。

「そう!ライバルよ!しかも究極の!」

「あはは、誰よそれぇ~」

「隼人さんよ!!」

「……はい?」






急な桜の発言に、私も杏奈も口をあんぐりと開けた。






「な、何で?」

「だって隼人さん、いつも棗~、棗~って来るじゃん!」

「そう?」

「そうだよ!こないだだって!今日だって!」

「気のせいだと思うよ~?」

ね、杏奈。と杏奈を見やる。

杏奈もつまりつまりに返答する。

「そうかな~?私は絶対!隼人さんは棗のこと好きだと思うけど」

「桜シツコ~イ!」

ケラケラ笑いながらチャイムが鳴る。

皆がやがやと席に着き始めた。


「杏奈」

「な、何…?」

「桜さえも奪っちゃうつもりなの?」






声には出さなかった。

だけど、きっと口の動きで分かっていたと思う。

私の口の動きを見て、青ざめて慌てて杏奈は前を見たから。


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