想いの果てに、
私に踏まれた腕をさすって涙ぐんでいる杏奈に声をかけた。
杏奈はスリでもするかのように自分の鞄を持って逃げるように教室から出て行った。
その日も、涼と杏奈が帰っているのを、窓から見送った。
私はいつまで…あの2人が一緒に帰ってるのを見送ればいいのだろう…。
私がさっさと帰ってしまえば問題ないというのに、
どうして私はこうして2人が居るところを見て傷ついているのだろう…。
やっぱり私は、「棗が1番可哀想」という称号が欲しいのかもしれない。
同情が欲しい。皆に味方して欲しい。
私は裏切られたんだ、杏奈に。涼を取られたんだ。
協力するって約束したのに、嘘をついたんだ…
捨ててしまえばいいのに…。
それでも、昔からあの大雑把ですぐに物を失くす涼が大事にしてきた指輪だ。
いくら私に与えられなかったと言えども、簡単には捨てたくない。
いつか…
いつかこの指輪が、私の元に来ますように。
そっと指輪を杏奈の靴箱に置いて帰った。