想いの果てに、
葛藤
「お前、まだ帰ってなかったん?」
「隼人先輩……」
涼と杏奈を見送った後、
ボーっと窓の外を眺めていて時間が経つのを忘れていた。
私は何時の間にか溢れていた涙を拭って、隼人先輩に向き合った。
「何しとったん?」
「ちょっと友達と話してて。隼人先輩こそどうかしたんですか?」
「あぁ、俺はコレをお前の机の中に入れようと…」
隼人先輩の手から英和辞典を受け取って、私は再び涼と杏奈の帰った道のりを呆然と眺めていた。
「……見てしもたん?」
ずっと窓を見続ける私は、隼人先輩の声を聞き流すようにして反応しなかった。
そんな私を見兼ねたのか、隼人先輩は近くの机の上に座って私の背中を一直線に見つめた。
そんな視線すらも、私は無視した。
ただ、呆然と窓を眺め、綺麗な夕焼け空を見た。