想いの果てに、
「な?いいじゃん……」
「で、でも早く教室に行かないと…」
「誰もいないんだし!すぐ終わるし…な?」
「……じゃ、じゃぁ、軽いの1回だけね…?」
「やった!杏奈、すっげぇ好き!!」
ヒソヒソ声でも必ず耳に入る声。
ずっと聞き続けた声。
その声のする方に音を立てずにそっと近づいた。
上履きを履かずに靴下で歩いていたから、案外音は立たなかった。
声のする方まで移動し、壁にぺったりと背中をくっつけ、そっと角を覗いてみた。
見なければ良かったんだ。
本当に、見なければ私はここまで狂わずに済んだのかもしれない。
だけど、声の主が涼と杏奈だって分かってしまったから、
「見ない」という選択肢は私の中には残されていなかった。