想いの果てに、
「んーん、見てないよ」

今までにないくらい、ニッコリと笑顔を作る。

この笑顔を見て心からの笑顔で返せる人間なんて居ないだろう。

「…?!」

「追い討ちかけただけー、騙される方が悪いんだよ」






虚しいくらいに私の良心が崩れ去っていくのが分かる。

あぁ、もう私はまともな人間じゃないのかもしれない。






親友が、






こんなにも憎い……―――











「ねぇ杏奈、どうして裏切り者が幸せになるの?」

「う、裏切り者だなんて…」

「あれ?私違うこと言った?」

「……っ!」

「偉くなくとも、正しく生きる。これが私のモットーだったんだけど……」



スっと俯いたと同時に一気に涙腺が緩む。

あぁ…まだこんな感情が残っていたなんてね…

でもこの感情は「自分が可哀想だ」という自己中心的な感情から生まれたもの。

要するに、周囲に気を使う、人間らしい感情ではないのだ。










「それはもう捨てた」


眼差しで杏奈を射殺せると思ったほどの、憎しみを感じた。

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