想いの果てに、
ボロボロと杏奈の目からは涙が零れ落ちる。
私はそれを偽りの哀れみで見ていた。
「杏奈、質問」
「ひっく、う……ひっく…」
「どうして人間を殺しちゃいけないんですか?」
「―――っ!!!」
私は杏奈の胸倉を掴んで、床に押し倒した。
そしてポケットに常時入れていたナイフを取り出し、杏奈の首筋に突きつける。
ナイフの切っ先は、紅い華の上。
「今度は脅しじゃないよ?」
「棗っ……!」
「ねぇ、杏奈?どうして裏切り者が幸せになるのかなぁ?」
「っ……!!!」
ニヤリと口元を吊り上げると、涙目の杏奈の顔が自分の瞳に映った。
「切り落としてあげる。私にはそれしか出来ないから」
「…!!やめて!!棗っ!!いやぁ!!!」
「暴れるとイラナイとこまで切り落ちちゃうよ~」
くっとナイフを杏奈の首筋に入れ込む。