想いの果てに、

―――――








隼人は1人で杏奈の肩を抱きながら歩いた。

今にもフラフラしていてコケそうだったからだ。

「大丈夫か?」と声をかける度に杏奈は「大丈夫です」と小声でしか答えない。

本当は大丈夫なんかじゃないのは分かってる。

早く病院まで連れて行かねばと思い、隼人は少し歩くスピードを速めたのだった。
















「あ、れ……?隼人先輩…?杏奈…?」

「涼……」






そう。自分も部活が終わったから図書室まで行けたのであって、

涼だって部活を終えて杏奈を探していたところなのだろう。

杏奈は常にグランドまで涼を迎えに来ているのだが、

今日はそれがなかったため、涼は杏奈を校舎中探し回ったらしい。

携帯も繋がらないし…とぶつぶつ言っている。






「な、何やってんスか…?2人で…」

「話は後や。とりあえず今は病院行くで」

「え、あ、は、はい……」

状況がよく飲み込めてない涼だが、血だらけの杏奈と、それを必死に支える隼人。

気持ちがモヤモヤしてはいたが、今はそんな状況ではないと

本能的に察知して、大人しく隼人の後をついて行ったのだった。

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