想いの果てに、
「………」
「俺、棗のこと小さい時から見てるけど、アイツは人をいじめるようなヤツじゃないですよ?」
涼がキッパリと言い切ると隼人はまた何かを考えるように少し俯いた。
「せやけど……」
「先輩!棗の事想い過ぎて別の誰かと姿は被ったんじゃないですか~?」
涼が笑っていると隼人は更に真面目な顔になって俺の両肩を掴んだ。
「笑い事とちゃうで…!?あれはもういじめなんてレベルやない…!」
「ちょ、ちょっと、先輩落ち着いてくださいよ。ね?」
普段と様子が違う隼人を見て、涼は隼人を宥めた。
それでも先輩が俺の肩を掴む力は弱まらない。
「落ち着いとる場合やないで…!?見たやろ!?犯罪レベルやで!?」
「…確かに杏奈の怪我はいじめなんてレベルじゃないですけど…」
「せやろ!?」
「…棗はそんなことしません。先輩は棗が犯罪レベルのいじめをしてるって言いたいんスか?」
「…認めたくないんやけど…そうや…」
「もー!さっきも言ったじゃないですか。棗は人をいじめるようなヤツじゃないって。
そんな棗が犯罪に近いことなんてするわけないじゃないですか!」
そう言いながらも何だかモヤモヤが止まらなかった。
杏奈が誰かに傷付けられたのも腹が立つ。
ぶっ殺してやりてぇ…。
そう思うほど、涼は苛立っていた。
それに反面、隼人が棗を杏奈いじめの犯人だと言ったことも、
心中穏やかではなかったのだ。
隼人の「棗の思ったとおりか」という言葉は涼には届かなかった。