想いの果てに、
裏切り②
あの後、家に帰って私はすぐに隼人先輩に貸していた辞書を取り出した。
それを持ち歩いていたナイフでズタズタに切り裂く。
高いお金を出して買ってくれたものなのに、ごめんね。
ズタズタにしたものを、私はそのまま机の上に置いて眠った。
その日は学校が休みだった。
それは土曜日だったから。
そう、土曜日。
涼の家に遊びに行く日…―――
実はガラにもなく少し緊張していた。
あの事があった後だからだろう。
隼人先輩は、多分涼に私の事を言った。
でもきっと涼は信用してない。
そう、大丈夫。
私は隼人先輩の上をいく。
サッカーしか能のない先輩を一ひねり。
なんて素晴らしい響きなんだろう。
隼人先輩は私の邪魔をした。
私の気持ちを知りながら涼と杏奈がくっつくのを黙って見てた。
隼人先輩だって、杏奈と同罪だ。
絶対に、先輩の思い通りになんてさせないんだから…
正直者はバカを見る。
だから私は自分を穢して、汚して…上をいってやる。