想いの果てに、
「本当なわけねーじゃんなぁ?」
「……………」
「棗?どした…?まさか……」
「…実は…昨日、隼人先輩に辞書を貸してくれって言われたから貸したの」
「おう?それで?」
「その日に隼人先輩は返してくれなくて……」
私はあらかじめ用意しておいた辞書を取り出した。
そう、ズタズタにした辞書。
その辞書を見て、涼は驚いた表情を見せた。
ねぇ、杏奈。これから私がもっと面白くなることを言ってあげるよ。
杏奈はきっと、涼に自分と涼が付き合うことを私には口止めするように言ってるよね?
だって杏奈は悪いことだって分かってて私を裏切って涼を取った。
だから…そのくらいの口止めはしているはずだよね?
じゃあ……これならどうかなぁ?
「んだよ…これっ……」
「……この状態で…机の上にあったの……」
「だ、誰にされたんだよ!?」
「……………」
私は黙って俯いた。そして少し腕に力を入れてふるふる震えるようにした。
「棗!黙ってちゃ分からないだろ!?言えよ!」
「……だ、だって…ずっと…ずっと親友だと思ってた子だからっ…!」
「だからこそ…だろ!?」
涼は凄い剣幕でズタズタになった辞書を見ていた。
そうなんだよね…。実は涼って怒るとすごい怖いんだ。
中学生の頃に高校生をボコボコにしたくらいだ。