想いの果てに、
「………杏奈」
「え…」
「杏奈に、されたの……」
「……杏奈はンな事しねーよ…」
…だよね。しないよ、杏奈はこんなこと。
今まで一緒に居て分かるけど、杏奈は絶対にそんなことしない。
だけどまだまだ私の芝居は続くよ?
「…昨日、授業が終わってすぐに帰ったんだ。だけど、忘れ物しちゃって…」
「忘れ物?」
「うん、宿題のノート。忘れたら宿題出来ないから…」
ジャンルは苦手な数学。授業のメモを見ながらじゃないと解けない。
それを涼は知っている。
だから「別の紙に書けばいいじゃん」なんて言わなかった。
「そしたら…教室に杏奈と隼人先輩が居て…」
「…それ、何時ごろ…?」
「夕方の6時半くらい」
「……………」
涼は黙り込んだ。昨日の時間と照らし合わせてるんだよね?
今の涼はきっとこう思ってる。
「隼人先輩は確かにその時間帯はすでに着替えて居なかった」ってね。
さっき涼は、「放課後、隼人先輩に呼び止められて私が友達をいじめてる」って
隼人先輩が言ってたって言ってた。
ってことは?
隼人先輩が私の感情が抑えられないことに気付いたのも、放課後。
昨日の放課後、私が図書室に残って、先に先輩と杏奈が居なくなった。
つまり、先輩と杏奈が一緒の時に涼に会ったってこと。
嫉妬深そうな涼は少なくとも2人のことを疑ったはず。