想いの果てに、
「…私、隼人先輩に嫌われちゃったのかな…」
「…何で?」
「だって私、そんなことしてないのに…涼にそんなこと言うなんて…」
「……棗…」
「私、何かした記憶なんてないのに…」
涙が出た。フリだったのに涙が出たよ。
涼を騙すために出てきた嘘の涙。
でもね、この涙は嘘の涙じゃないの。
どうしてこんな卑怯な手を使わないと涼を傍に置いておけないのかっていう、自己嫌悪の涙。
ばかみたい。
自分で偽善者だって気付いてるのに、涙が出るなんて。
私、自分が分からないよ…
「棗、大丈夫だよ。棗が悪いヤツじゃないってこと、俺が1番に知ってるからさ」
「涼……」
「まぁ、きっと何か誤解してんだよ!隼人先輩」
「うん、そうだよね…」
「だから、心配すんな?俺は分かってるから…」
何でこんなに涼は優しいのかな。
何でこの優しさが杏奈に向けられたのかな。
何で私の事が好きでもないのにこんなに優しいのかな。
私は涼にすがりついて泣いた。
もし、本当の事がバレてしまったら、私は一体どうなるんだろう。
きっとこんな大事、学校にもすぐ広まって……
本格的に、表面上の仲間すら居ない環境になるのかな…
もうやって良い事と悪い事、区別はつくけど止まらない…
本当、ばかだ私。
もう戻れないところまで来ちゃった。
杏奈は確かに私を裏切ったけど、
私だって同じくらい、涼のことを裏切ってるんだ……―――