想いの果てに、
つい、魔が差した。

私は無意識に涼の左手の薬指に手を伸ばす。

これさえ捨ててしまえば……。






だけど悪いことは早々させてくれないものか、

運悪く涼は目を覚ましてしまった。

慌てて私は涼を揺り動かしていたような素振りを見せる。






「あ、涼、おはよっ…」

「棗?来てたんなら起こしてくれればいいのに…ふぁあ」

「お、起こしてたよ、何度も……」






思わず涼から目線を逸らす。

そんな私を、涼はキョトンとして見ながら自分の薬指に気付いた。

「あ、もしかして、これ見てた?」

「え?あ、まぁ……綺麗、だね」

「へへ、姉ちゃんがくれたやつ!」

「……涼、さ」











姉ちゃんがくれたやつ、とまで言えば、どういう時にはめるのかくらい、涼の頭の中では理解出来ていることだろう。
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