やっぱり君が可愛すぎて
「別に……なんでもない」
どう答えるか必死に考えた末、わたしの口から出たのはそんな可愛いげの無い一言で。
こんな時に、上手い言い訳ひとつ出来ない自分の頭の悪さを心底悔やんだ。
こんな適当な言葉に、「そうか分かった」と、この彼が納得するはずがない。
そんなことくらい、分かっていたのに。
「……」
顔を逸らしたまま彼の反応を待つも、いっこうに返ってこないのが怖くなって、おずおすと彼を見上げた。
「……っ」
思わず声にならない悲鳴が漏れる。
わたしを見下ろす彼の顔は、相変わらずの妖しい笑顔に歪んでいた。
顔は笑っているのに、目だけは笑っていない。
わたしの心の中を全て見透かしているような目。
だけどわたしは彼が今なにを考えているかなんてさっぱり分からない。
だから、怖い。
「君はほんまにアカン子ォやね」
独特の甘い声で、そう耳元で囁かれれば、ぞくりと背筋が凍りつく。
「君のそないなとこも悪ないけど、たまには素直んなってくれた方が好みやなァ……」
「……うるさい」
なれたらとっくになってる。
わたしが素直になれないのはそっちのせいだ。
わたしが素直に想いを伝えたら、どうせ逃げるくせに。