やっぱり君が可愛すぎて
「ていうか、いい加減もう離して」
さっきからずっと頭の上で押さえ付けられている両手首が痛い。
それになんだか今日のスズくんは変だ。
なんでこんなに怒ってるんだろう。
わたしが素直じゃないのはいつものことなのに。
「ねぇ、離してってば」
「ならボクに言うことあるやろ?」
「……意味分かんない」
スズくんは長く息を吐くと、わたしの両手首を掴む手に更に力を込めた。
それが痛くて身体をよじったら、わたしを見下ろす冷たい瞳と目が合った。
「……可愛ないな」
ポロ、と頭の上で呟かれた言葉に思わず目を見開く。
“可愛くない”
確かに彼は今そう言った。
そんなこと、今まで言われたことなんてなかった。
ずきり、ずきり、と胸が痛みだして、目の奥が熱くなってくる。
可愛くない。
どうせ可愛くないよ、わたしは。
他にいる本命の彼女は、きっとさぞかし素直で可愛い子なんだろうな。
なら、わたしじゃなくてその子とずっと一緒にいればいいのに。
……ああ、一人だけだと飽きちゃうのか。
だからわたしのこともこうやって弄ぶのか。
最低だ。
やっぱり最低だ、この人は。
嫌いだ。
大好きなのに、大嫌いだ。