やっぱり君が可愛すぎて
涙がこぼれそうになって、慌てて顔を背けた。
「痛い!も……本当に、いい加減にして!」
身をよじっても、足をばたつかせても一向に離してくれない。
もがくわたしを、彼は何とも言えない表情を浮かべたまま見下ろしている。
「あーあ……どないしょ」
どうしようもこうしようもない。
早く離してくれればいいだけなのに。
「やっぱり、まだまだ躾が足りひんかってんねや」
何やらぶつぶつ独り言を言い始めた彼を見上げる。
目ではわたしを見ているのに、心は全く別のところ、自分の世界にいるようだった。
「ボクとしたことが……なんや甘やかしすぎてもーたみたいやね」
「っ!?」
突然首に手を回されて、抵抗する間もなく首を絞められた。
「くっ……るし……!いや!離してっ……!」
「まァた逃げようとする。ほんまに君はおばかさんやなぁ」
「ボクから逃げるなて、さっき言うたばっかりやろ?もう忘れたん」 そう言うのと同時に、首を絞める彼の手に力がこもっていく。
苦しい。
逃げるなと言われても、反射的に足がばたついてしまう。
「なぁ……ボクんこと、好き?」
頭の上で囁かれた質問。
首をしめられているせいで声が出せないし、仮にしめられていなくても答える気なんてなかった。
嫌い。大好きだけど、それと同じくらい大嫌い。
スズくんはなんでこんなことするんだろう。わたしのことを好きだって言いながら、なんでこんなにひどいことをするんだろう。いっそ好きだなんて言わないで欲しかった。女の子で遊びたいなら、わたし以外の女の子で遊んでいて欲しかった。これ以上振り回されたら、わたしの心は壊れてしまう。
苦しい。しめられている首も、振り回されている心も。
我慢できなくなって、目から涙をこぼせば、ますます首をしめる力が強くなって、彼のことが本当に怖くなった。
「うっ……あ」
「ん?」
わたしが小さく口を開いたことに気付いた彼は、少しだけ首をしめる力を緩めて、喋るように促す。
「……嫌い」
そう言って睨んだら、彼は一瞬驚いたような顔をして、それからすぐにまたいつもの妖しい笑顔に戻った。
「そか」
がくん、と世界が揺れた。
乱暴に身体を揺さぶられて、無理やり服を剥がされて、滅茶苦茶にシーツに押し付けられて。
「やだあっ……やだ……っ、嫌あああ……!」
いくら泣きながら叫んでもやめてもらえなくて。
「も……やだ……」
わたしはただ、きつく目をつぶって、ひたすら耐えることしかできなかった。