やっぱり君が可愛すぎて
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ぴったり肩をくっつけてソファーに座りながら、私たちはいつものようにテレビを観ている。
毎週必ずこの時間にやっている有名なバラエティ番組。画面の中で、色んな有名人が楽しそうに話しているのを、私はただぼんやりと眺めた。
「この芸人おもろいなァ」
ちら、と隣を見上げると、テレビを観ながら、いつもの感情が読み取れない笑顔を浮かべている彼の顔があった。
……ほんとに面白いと思っているのだろうか、この人は。
笑ってるけど目は笑ってないし、全然面白そうじゃない。
「どこが面白いの?」
私がそう尋ねると、彼は「んー」と軽く鼻で笑う。
「だってあの子、笑い取るのにめっちゃ必死なってんねやもん。ここまでプライド捨てて体張ってるとこ見ると、可哀想で笑える」
ほらね。
「……スズくん、お笑いの楽しみ方間違えてる」
そんな歪んだ観点からお笑い観てる人間なんて恐らくこの男くらいだ。
「わたしは結構この芸人好きだよ」
テレビを見つめたままそう呟くと、それまでテレビを観ていた彼の肩がぴくりと揺れた。
「なん?君はこういうどこでも裸になってサムい一発ギャグするような男が好きなん?ボク、無理やで。絶対できひん」
「違うよ。芸人としては面白いから好きって意味。わたしだってどこでも裸になって一発ギャグするスズくんなんて絶対無理だよ」
テレビに視線を向けたままそう言い放てば、突然ガバッと抱き締められて、慌てて彼の方を見上げた。
「な……なに!?」
「……嫌や」
「なにが」
「君がボク以外の奴、好き言うなんて……」
「……」
「……」
「……あの」
抱き締められくっついた彼の胸をぐっと押し返せば、思いの外、簡単に体は離れてくれた。思わず小さく溜め息を吐く。
「芸能人に嫉妬ってバカなの?」
わたしがそう言うと、肯定するわけでも、反論するわけでもなく、彼はにこ、と不可解な笑みを浮かべて体を元の位置に戻した。