やっぱり君が可愛すぎて
しばらくしつこく鳴り続けてから、携帯はぴた、と動きを止めた。
同時に小さく溜め息を漏らす。
これが、わたしが素直に彼を見ることができない大きな理由。
彼は確かにわたしのことを好きだと言ってくれる。
もちろんわたしも彼のことは大好きだ。それはもう昔から。
だからわたしたちはいわゆる両想いってやつで、キスもするし、それ以上もしてるわけなんだけど……。
でも、わたしたちは付き合ってるわけじゃない。
好きって言われたことはあるけど付き合おうって言われたことはないし、ましてや当然言ったこともない。
だから多分わたしは彼女ではない。
だからきっとスズくんは、こういう風にいまだに色んな女の子と連絡を取り合って遊んでるんだと思う。
もしかすると、他にちゃんとした本当の彼女がいるかもしれない。
好きなんて言うだけタダや、くらいに思ってるのかもしれない。
色んな女の子に好きって言って、上手く転がして、都合よく遊んでるのかもしれない。
そしてわたしはそのうちのひとりに過ぎないのかもしれない。
整った綺麗な顔とすらりとしなやかな長身、鼓膜を溶かすような甘い声で紡がれる関西弁と、落ち着いた柔らかい物腰。
一見すれば、女の子なら誰しも憧れる男の子を絵に描いたような人。
まあ、少なくとも顔もスタイルも凡人並みのわたしが吊り合う相手じゃないことくらい
自分でも分かる。
きっとスズくんは本気じゃない。
ただ、ちょっと大人になってきた年下の幼馴染みをからかってやろう程度だと思う。
その程度のノリでわたしの初体験を奪ってくれるのだから、心底最低な男だなと思うけど、そんなやつに夢中になって、こんなに苦悩してる自分は、どうしようもなく馬鹿な女なんだと思う。