やっぱり君が可愛すぎて

しばらく携帯をいじっていた彼が、不意にわたしに視線を落とす。


「ご免な、ちょっと電話するさかい」


ご免だなんてこれっぽっちも思ってないような、いつもの嘘くさい笑顔でそう断ってから、彼は携帯を耳元に当てた。


「はいはい、どうしはったの」


受話器の向こうから微かに聞こえるのは、確かに女の子の声。
多分さっきかけてきた子だと思う。
何を話しているかまでは詳しく聞こえなかったけど、彼の話し方や笑い声から推測する限り、すごく楽しそうだし、仲もよさそう。


彼に膝枕をされながら、彼が他の女の子と楽しそうに話している声を聞く。
胸がズキズキと痛み始めて、思わずぎゅ、とかたく唇を噛み締めた。


「あー、明日?午後からならええよ」


彼の話している内容から、明日彼がその子と遊びに行くということは簡単に分かった。
わたしを学校に送った後に、別の女の子を迎えにいくのか、そう考えてただけで、今にも涙が溢れそうになる。


ほんとは嫌だ。
他の女の子となんか遊ばないで、他の女の子なんかに優しくしないで。
わたしだけ見てて欲しいのに。


でも、彼女でもなんでもないわたしがそんなこと言う権利なんて少しも無い。
何より束縛を嫌がる彼にそんなこと言ったら多分嫌われる。
もしかしたら、また離れて言っちゃうかもしれない。
ずっとずっと追いかけて、やっと追いついたと思ったのに、そんなの嫌だ。





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