ハニー*トラブル~君の彼氏はつらいよ~
なかなか答えない俺の心中を察したのか、啓太がアプリでメッセージを送ってくる。鈍感なこいつにしては珍しい。
『で、好きなの?』
マナーモードに設定してあるスマホが振動して、画面に文字が表示された。
それを見て軽く頭を抱えるけど、素直に返事をすることにした。どうせ、啓太には嘘つけないし
ただ単純に、俺が嘘つくの下手なだけなんだけど。
『正直、城ヶ崎さんのことよく知らないし、好きとかわかんね』
『お前、それだめじゃね? 親衛隊にバレたらやばくね?』
『親衛隊じゃなくてJMSと呼ぼう!』
すぐに既読の文字がつくと、後ろから椅子を蹴られた
いてっ!
「意味わかんねぇよ、アホ」
「なんでだよ、かっこよくね?」
あきれた顔をしてこめかみをおさえる啓太。
タイミングがいいのか悪いのか、チャイムが鳴り響いて慌ててこの話はまたあとでと啓太に言われた
俺的にはあまり話したくないことだったから、ちょっとホッとした。
それから、クラスの男子の鋭い視線を啓太と避けながら時間は流れ、昼休みになった。
西田に言われた通り、指導室へ行くと、放課後までの期限を言い渡され、反省文を書くための原稿用紙を三枚もらった
たかが遅刻しただけで反省文を三枚も書けるか!って思ったけれど、口には出さずに(出せずに)指導室を出た
「はぁ~……まじありえねぇ。バカじゃねぇの、西田のやつ」
教室に戻りながら、ぶつぶつ文句をこぼす。
すれ違う人たちの『こいつひとりごと言ってるやべぇ』って顔が辛い。
頭痛のする頭を右手で押さえながら教室の前まで来ると、ずらっとJMS軍団が並んでいた
……まじかよ!
見つからないうちに逃げようとつま先の方向をくるっと変えると、下を向きながら静かに逃げる。
が、
「松本くん?」
きれいな透き通った声に呼び止められ、それは叶わない。