ハニー*トラブル~君の彼氏はつらいよ~
「別にいいけど、お前親衛隊に気を付けろよ」
「おう! あ、親衛隊じゃなくてJMSだぜ!」
はいはい、と俺の言葉を流す啓太に手を振って教室を出ると、恥ずかしそうにうつむいている城ヶ崎さんに、話しかけた
お友達は気を遣ったのか、二人ともいなくなっていて、だけど、JMSは俺を見張るように数メートル離れた場所でこっちを見ている。いや、睨んでいる。
怖っ……。
「あー、どこで食う?」
中庭は人が多いし、屋上はたしか、立ち入り禁止で鍵がしまってるはずだ。
俺、いつも教室で食ってるからいい場所知らねぇんだよな。
考え込む俺を、城ヶ崎さんは微笑むと制服の袖をぐいぐい引っ張ってきた。
「わたし、いい場所知ってます!」
胸を張ってそう笑うと、俺の目の前をちょこちょこと早足で歩き始めた
進むたび、城ヶ崎さんの柔らかそうな髪の毛が揺れて、なんだか面白い。
「城ヶ崎さん可愛いなぁ……」
「へっ?!」
思わず漏れた言葉に、過剰なくらい反応して振り返る整った顔。
ゆでダコみたいに真っ赤になって、あたふたする姿は小動物みたいだ。
……じゃなくて、
俺、今“可愛い”って口に出てた!?
「や、あの、違うよ! いや、違わないけど! なんか、急にごめん!!」
「ビックリしたよ、松本くんいきなり、か、かかか可愛いなんて言うから……」
「や、だって可愛いよ?」
「も、もも、もう黙っててください!」
髪の毛をしきりに触ってうつむくのは、彼女が恥ずかしいときにする癖なのか、何度も繰り返してる
口を一文字に結んで再び歩き始める
あれ、怒ったかな?
俺、なんかまずいこと言った?
可愛いって言葉嫌だったかな? 綺麗の方が嬉しいのかな