ハニー*トラブル~君の彼氏はつらいよ~


「別にいいけど、お前親衛隊に気を付けろよ」

「おう! あ、親衛隊じゃなくてJMSだぜ!」


はいはい、と俺の言葉を流す啓太に手を振って教室を出ると、恥ずかしそうにうつむいている城ヶ崎さんに、話しかけた


お友達は気を遣ったのか、二人ともいなくなっていて、だけど、JMSは俺を見張るように数メートル離れた場所でこっちを見ている。いや、睨んでいる。


怖っ……。


「あー、どこで食う?」


中庭は人が多いし、屋上はたしか、立ち入り禁止で鍵がしまってるはずだ。



俺、いつも教室で食ってるからいい場所知らねぇんだよな。


考え込む俺を、城ヶ崎さんは微笑むと制服の袖をぐいぐい引っ張ってきた。


「わたし、いい場所知ってます!」


胸を張ってそう笑うと、俺の目の前をちょこちょこと早足で歩き始めた


進むたび、城ヶ崎さんの柔らかそうな髪の毛が揺れて、なんだか面白い。


「城ヶ崎さん可愛いなぁ……」

「へっ?!」


思わず漏れた言葉に、過剰なくらい反応して振り返る整った顔。


ゆでダコみたいに真っ赤になって、あたふたする姿は小動物みたいだ。



……じゃなくて、


俺、今“可愛い”って口に出てた!?


「や、あの、違うよ! いや、違わないけど! なんか、急にごめん!!」

「ビックリしたよ、松本くんいきなり、か、かかか可愛いなんて言うから……」

「や、だって可愛いよ?」

「も、もも、もう黙っててください!」


髪の毛をしきりに触ってうつむくのは、彼女が恥ずかしいときにする癖なのか、何度も繰り返してる


口を一文字に結んで再び歩き始める


あれ、怒ったかな?



俺、なんかまずいこと言った?


可愛いって言葉嫌だったかな? 綺麗の方が嬉しいのかな


< 17 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop