残業しないで帰りなさい!
その後私は立ち上がって、自分でブラウスをなおした。
ただブラウスをまくられて中を見られただけ。
だけど、ブラウスをスカートの中に入れ込みながら、子どもながらに強い恥辱を感じた。その時初めて涙が落ちた。
一人で家に帰った後、言っていいのか悪いのかすごく迷ったけれど、やっぱりすごく怖かったから、お父さんが帰ってきてご飯を食べている時にその話をした。
その話を聞いてお父さんはとても怒った。もちろん私にではなくその出来事に対して。
そして、すぐに学校に電話をして、まだ残っていた先生に対策をするようかなり強い言い方をしていた。そして警察にも言おうと言って、いろんなことを考えているようだった。
その時、優香さんが私にこそっと耳打ちした。
『本当は香奈ちゃんが誘ったんじゃないの?子どものくせに女を意識しちゃってさ』
お父さんには聞こえなかったと思う。
でも、私はとても強い衝撃を受けた。
その後、同じような目に遭っている子が何人も出て来て、集団登下校するようになり、スクールカウンセラーのおばちゃんがしばらく学校に来るようになった。
でも、おばちゃんには悪いけど、あまりちゃんと話をする気になれなかった。
あのお兄さんは捕まったらしい。
私は髪を切り、二度とスカートは履かなかった。
そして、その後1年もしないうちにお父さんは死んでしまった。