残業しないで帰りなさい!

頭が痛い。キーンと耳鳴りがする。

「……さん、……青山さんっ」

なんでだろう。

ぼわぼわと藤崎課長らしき声が聞こえる。

夢?

少し瞼を開けたら、白い光が眩しくてまた目を閉じた。

「あっ!青山さんっ!」

これは間違いなく課長の声だ。だいぶクリアに聞こえる。

何度も私を呼ぶ課長……。

どうしたの?
どうして課長がいるんだろう。

意識がはっきりしてきて、薄く目を開けた。

天井が見える。

えーっと、ここ、どこだろう。

「気がついた?青山さんっ!わかる?」

課長の必死な声が聞こえる。

「……かちょう?」

声の方に視線を向けると、課長がびっくりするほど心配そうな顔で私を見ていた。

あんまり心配そうな顔をするから、その表情が刺さって、胸がギュウッと痛くなる。

「わかる?」

私がうなずくと課長はため息をついた。

「……良かった。ホントに良かった……」

ふと違和感を感じて視線を落とすと、課長が私の左手を持ち上げてギュッと強い力で握っていた。驚いて思わず左手を引く。

「あ、ダメだよ、動かしちゃ。切れてるんだ。今、白石さんが救急箱取りに行ってくれてるから」

え?切れてる?
どういうことだろう。全然痛くないけど。
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