残業しないで帰りなさい!
家に帰って包帯でグルグル巻きの手をじっと見たら、今日一日の出来事がいろいろと浮かんできた。
まさか倒れるなんて……。
驚いちゃったなあ。
あんなの、本当に初めて。
ああいう風に思い出すんだ。
あんなリアルに……。
怖いと思う気持ちもあるけれど、自分でも面白い現象だな、なんて思ってしまう変な私。
自分で自分を観察するというか、自分に起こっている現象に好奇心を持つ私がいる。
私は怪我をすると、痛い場所や痛み具合を確認したくて何度も押したりする癖がある。それと同じ感じ?私、変わってるのかな?
いや、ちゃんと知りたいだけ。
今日のあれはいったい何だったんだろう。
もしかして、今まで私、こうなることがわかっていたから男の人を避けていたのかな。
いや、そんなことはない。まさかこんなことになるなんて考えてもいなかった。
あの事件のことを進んで思い出したりはしないけど、一切思い出したくない、というほど拒否的でもない。
それなのに、私の心は自分に見せつけるようにあの事件をリアルに再現してみせた。
少しは男の人が苦手なのを克服してると思ってたんだけど、全然克服できてないってことなのかなあ。
でも今日倒れたのは、いろんな原因が積み重なって追い込まれたせいもあるかもしれない。
あの時私は、課長と久保田係長が恋人だったことを知って、落ち込んで心が弱っていた。
その上、話したくない久保田係長に腕を掴まれトイレに連れ込まれて、すごく嫌だった。
その前に色黒のオジサンから変なことを言われて女扱いされたのも嫌だったし、久保田係長から接待しろって言われたのも嫌だった。
あとは、あのシトラス系のコロンの匂い……。
最終的な引き金は、顔とか首を触られたこと。
つまり、たくさんストレスを感じていた?だから触られた時、過剰に反応しちゃってリアルに思い出して、倒れたりしたのかなあ。
うーん。それにしても倒れるなんて、やっぱりよくない。たくさん迷惑をかけちゃったし。自分も痛い思いをした。
やっぱり私、男の人はダメなんだなあ。
以後、近付かないように気を付けよう。