残業しないで帰りなさい!
そういえば、今日は目が覚めてからずっと課長がそばにいたなあ。今になってドキドキしてきた。あの距離感を思い出すとドキドキし過ぎて心臓がひっくり返りそう……。
あんなに心配してくれて、あんな泣きそうな顔をするなんて……。今にも泣き出しそうな顔だった。
思い出したら目が熱くなって、胸が痛くなる。
そういえば、今日はずっと課長に手を握られていたんだ。課長の大きな手の質感を思い出したら、ドキドキしてぼわっと頬が熱くなった。
でも、あれは手を握っていたんじゃなくて止血していただけ、なんだけどね。
……そういえば。
課長は平気だったなあ。
あんなにガッツリ触られても、あんなにそばにいても。
私、全然平気だった。
何で課長は大丈夫なのか、ちゃんと知りたいところだなあ。
いや……。
理由なんてただ一つ、なんじゃないのかな。
それはやっぱり。
恋をしているからじゃない?
……?
恋をしていると平気なの?
どうして恋をしていると平気なんだろう。
それとも、平気な人だから恋をしたの?
目には見えない平気な人オーラがあるのかな?
……そんなわけないかっ。
そもそもなんで私、課長に恋をしちゃったんだっけ?
あんな風に、私なんかのことも心配してくれるような優しい人だから?
うーん……。
そういう優しいところも好きだけど、やっぱり私はあの雰囲気が好きだなあ。王子様なのに、のんびりしたあの雰囲気。
私はきっと、うたたね王子と言うか、のんびり王子に恋をしたんだ。
あの人のそばにいられたら、きっとすごく幸せだろうなあ。
そっか。人を好きになるとその人のそばにいたいと思うんだ……。
なんか、すごく胸が痛い。
私は課長のそばにいたいけど、私の願いは叶わない。だって課長の好みは、私と真逆の久保田係長みたいな人だもの。
私がどんなに願っても、課長のそばにはいられない。だから、胸が痛くてたまらないんだ。