残業しないで帰りなさい!
それにしても、やっぱり私、課長だと全然平気なんだなあ。普通なら触られるだけでもかなり嫌なはずのに、抱き上げられたって聞いて喜んでるし……。
他の男の人とはこんなに違うなんて、やっぱり課長は『特別』ってことなんだろうな。
見ると沢口さんはもう完全に作業の手を止めて、話に夢中になっていた。
「それに、聞いてくださいよ!青山さんがあのチャラ男に触られたって聞いてあの課長さん、何て言ったと思います?『君に触るなんて、許せない』って言ったんですよ!」
「きゃー!」
「キャーッ!」
「やばーい、胸きゅーん!」
「でしょー?」
……お二人とも、どうしちゃったんですか?
やっぱり沢口さん、絨毯のお掃除しながら私たちの会話、聞いてたんですね?
だいたい沢口さんってそんなキャラクターでしたっけ?課長の台詞、若干盛ってるし。
「許せない、とまでは言ってなかったと思いますけど……」
「『君に触るなんて』の後に続く言葉なんて、『許せない』の他にないでしょう?」
「そうだよー」
「……そうでしょうか」
お二人とも、なんか楽しんでいませんか?勝手に話を盛ったりして。
「どうしちゃったんですか?お二人とも」
二人は同時にバッと私の方を向いた。